「詐欺」と聞くと振り込め詐欺や架空請求などが真っ先に頭に思い浮かびますが、不動産取引においても詐欺は存在します。
積水ハウスが地面師に騙された詐欺事件が大きく報道されたのは記憶に新しいです。
プロでも騙されて大金を失ってしまう…不動産の取引は金額が大きいだけに絶対に失敗したくありませんよね。
一般的には、お金を払う買主側に多く見られる詐欺ですが、家を売る時に被害に遭わないようにするための知識を紹介します。
不動産売却における詐欺
不動産取引は多額のお金が絡むとあって、詐欺被害に遭えば被害は甚大です。
巧妙に準備され、組織的に詐欺をするのが特徴です。
最近では積水ハウスが多額の被害に遭う詐欺事件が話題になりました。
積水ハウスの地面師による詐欺被害
地面師とは土地所有者を装って売買契約を結び、代金をだまし取る人のことをいいます。
戦後の混乱期やバブル期に多発していましたが、近年では2017年に積水ハウスが被害に遭ったことで注目されました。
事件の舞台は、五反田駅から徒歩3分という超好立地にある約600坪の土地。
価値が80億円とも100億円ともいわれる廃業した旅館。
価格が価格なだけに、手が出せるのは大手不動産業者くらいでしょう。
マンション用地として注目されていましたが、売らない地主とされていたため、のちの仲介役を果たすことになる人物が積水ハウスの社員に会合の場で話を持ちかけても、当初は半信半疑のままでした。
しかし仲介会社が売買契約と所有権移転登記の仮登記の申請をしたことで積水ハウスは信用し、手続上は売主→仲介会社→積水ハウスでの土地取引の話が進むことになりました。
地面師は偽の所有者を用意し、偽造パスポートで公証人による本人確認まで行ったといいます。
積水ハウスのような大企業がなぜ騙されてしまったのか?と疑問の残る事件でしたが、実際は怪しむべき点はいくつもあり、途中で気づくことができた取引でした。
偽の所有者は生年月日や住所を間違える失態をするなど怪しいところもあり、弁護士には第三者に本人確認をしてもらう必要性が指摘されていたにも関わらず、実施されずに偽の本人確認資料しか確認しなかったのです。
関わった人が皆、「おそらく大丈夫だろう、まさか詐欺なんて」と思いながら取引を進めていたことでしょう。
この事件では売買契約後に仮登記の申請がなされたことで、真の所有者の知るところとなり、内容証明による警告を積水ハウスにしていました。
にもかかわらず、内容証明は妨害工作であると軽視され、残金決済を早めることになってしまいます。
しかも残金決済日には警察が現地に出動し、現地にいた積水ハウスのスタッフが、決済の現場にいたスタッフに警察が来ていることを連絡していたにも関わらず、これもまた妨害工作に過ぎないと判断され、そのままお金が支払われてしまいます。
その日に申請された登記は、後日却下されることで詐欺であったことが判明します。
この事件で学べることは、仲介会社の素性が知れない、売主本人の受け答えに疑問点があった、本人確認の方法が足りていない、警告を無視してしまった等のリスクが高い取引であったということです。
またお金のためならば書類が偽造され、売主の意思に反して詐欺が行われてしまうというリスクがあることも不動産所有者は心得ておかなければなりません。
手数料の詐欺
家を売るために売主が払うのは仲介手数料のみ、ということが基本です。
広告宣伝費用は仲介手数料に含まれているので、別途請求されるならば、疑った方が良いでしょう。
また仲介手数料は成功報酬なので、早くても売買契約ができてからの支払いです。
媒介契約に手数料がかかるといった場合は詐欺に当たりますので要注意です。
仲介を依頼しただけでは手数料はかかりません。
実質詐欺同然の囲い込み
囲い込みとは不動産業者が手数料を多くもらえるように別の不動産業者に物件を紹介しないようにすることです。
仲介手数料は買主からも売主からももらえるものなのですが、自社で売りたい人と買いたい人のマッチングができた場合、それぞれから仲介手数料がもらえます。
買主と売主にそれぞれ別の不動産業者がいる場合に比べると、少ない労力で仲介手数料が2倍になるのです。
これを両手取引といいます。
不動産業者は家の売却依頼があれば、まずはレインズに載せて、広く情報発信しなければなりません。
(※レインズについては、レインズとは?一般の人でも見られる?不動産の価格を調べる方法!で詳しく解説しています。)
掲載されるとレインズを見た不動産業者から連絡が入るようになるのですが、ここで「商談中です」などといって他の不動産業者に紹介しないようにすることを囲い込みと呼びます。
売主にとっては機会損失です。
少しでも高く売れる可能性があったかもしれません。
また、囲い込みをすると売主と買主の両方の代理人の立場になるので、少しでも売れやすくしようと不動産業者が値下げの交渉に持っていこうとするかもしれません。
売買価格が下がると仲介手数料も下がるのですが、それよりも買主と売主の両方から仲介手数料が入れば、一方からしかもらえないよりも、利益は大きくなります。
レインズに載っていれば、他の不動産業者が関心を持って内覧(内見)の依頼をしてきます。
媒介契約をした不動産業者が紹介する購入希望者しか内覧に来ないといった時は、囲い込みがあるのかもしれません。
詐欺かもと思ったら
何か怪しい、詐欺では?と思った時にまずできることとして不動産業者を調べること、契約通りレインズに載っていることを確認しましょう。
登録のある不動産業者ならば、不動産協会に相談することができますし、都道府県ごとに苦情や相談の窓口があります。
そもそも免許がない不動産業者となれば、一人で悩まず消費生活センターや法テラスなど他の場所に相談する必要があるかもしれません。
免許がある業者か調べる
国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで業者が登録されているかどうか確認できます。
所属している団体も確認できるので、このサイトで確認できれば怪しい業者の可能性はかなり低いでしょう。
レインズに登録されているか
専任媒介契約か専属専任媒介契約を結んだ不動産業者はレインズに物件を登録しなければなりません。
登録された情報はどの不動産業者でも見ることができるので、成約のチャンスが広がります。
逆にいうとレインズに載っていない物件は、他の不動産業者が知ることができません。
登録されると、売主には登録証明書が発行されます。
レインズは一般公開はされていませんが、登録証明書を持っている売主は専用の確認画面をIDとパスワードで見ることができるので、自分の物件が掲載されているか確認できます。
媒介契約を結んだ業者がどうしても怪しいと思ったら、他の不動産業者に査定をもらう&レインズに掲載されているか確認してもらう方法もありますね。
一般媒介契約以外では、レインズに登録しないのは不動産業者の宅建業法違反になります。
自社で買主を見つけて囲い込むには情報をできる限り、他の不動産業者に出さないのが有効なので、レインズに載せたがらないのです。
重要書類は渡さない
登記識別情報(権利証)のような重要書類は通常不動産の所有者が保有しているものですが、信用できない相手には絶対に渡してはいけません。
所有権の移転登記など法務局への申請に必要となるものですので、不動産取引の決済時には身元が確かな司法書士に同席してもらい、確実に書類を渡します。
悪用されればトラブルに巻き込まれてしまうため、普段から保管にも気をつけましょう。
悪質な業者に出会わないようにする&物件相場を把握しておく
相場よりも高すぎる査定を見抜けると悪質な業者に気づくことができます。
「今なら」「あなただけ」などの甘い言葉に惑わされないようにしましょう。
買取再販業者による査定ではない限り、不動産の査定は売却価格の目安にすぎません。
仲介に出した時は、買主からも値引きの要請があることがほとんどで、売り出し価格よりも安くなってしまうことは多いです。
高い査定は家を売りたい人には魅力的かもしれませんが、査定の高い金額で売ってくれる保証などないのです。
中には高い査定を出すことで売り物件を集める悪質な業者がいます。
高い査定額を信じて売り始めたはいいけれど、ずるずると売れないまま、どんどん値引きをしなければならないなんてことになりかねません。
悪質な業者に気を付けて査定も取得したいなら、「不動産一括査定サイト」の利用がオススメです。
クレームが多い悪質な業者はNG、選ばれた不動産業者が登録されています。
査定依頼をしても、売却は断っても大丈夫。
相場を掴むためにまずは不動産一括査定サイトで複数の査定をもらいましょう。