土砂災害警戒区域の家を売ることは可能?指定されるとどうなる?

集中豪雨による災害が毎年のように発生しており、土石流、地すべり、急斜面の崩壊などの土砂災害について心配になるところ。

土砂災害の恐れがあるところは「土砂災害警戒区域」と指定され、重要事項説明書に記載して説明する義務があります。

神奈川県逗子市では土砂災害警戒区域に指定されていた斜面の一部が崩落し、死者が出る事故が起きたばかり。

事故原因の土砂はマンションが建っていた私有地からのものなので、責任の所在も気になるところです。

この記事では土砂災害警戒区域についてから、神奈川県逗子市の事故そして土砂災害警戒区域内の家を売る方法まで解説しています。

土砂災害警戒区域とは

土砂災害というと山肌が崩れて麓の民家を飲み込むイメージですが、急斜面が街中にあれば土砂災害警戒区域に指定されます。

区域に指定することで、リスクのある場所を自治体や住民で把握し、防災に役立てる目的があります。

土砂災害警戒区域の指定は土砂災害防止法に基づいています。

土砂災害防止法が施行されたのは、2001年。

1999年6月に広島県広島市や呉市で起きた豪雨では300件以上の土砂災害が発生し、死者も出ました。

そこで危険なところをあらかじめ把握しておくことで、防災に役立てたり、新しい住宅の抑制、既設の住宅でも危険性が高ければ移設を促すために土砂災害防止法がつくられました。

区域の指定を行うまでには調査を行うため、半年から1年以上の時間がかかることもあります。

また必須ではないのですが、住人への説明会を行う自治体が多いため、土地の価値が下がるとして住民に反対されてしまい、区域の指定が思うように進んでいないところもあります。

土砂災害警戒区域内であるかの確認方法は、自治体が作成するハザードマップなどで確認することが可能です。

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

土砂災害警戒区域は危険性があるということの周知や避難に役立てる目的で指定することで、指定されたからといって法的に規制がされる場所ではありません。

今まで災害が起きたことがなくても将来は分かりません。

そのため必ずしも過去に土砂災害があったところばかりが指定されているわけではありません。

一旦、土砂災害警戒区域に指定されても、地形の変化があれば範囲が変更されたり解除されたりといった可能性もあります。

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)

土砂災害警戒区域よりも危険度が高いところが指定されます。

土砂災害警戒区域との違いは、制限が加わるという点です。

一定の条件の建物の建築が許可制になっていたり、住宅は土砂災害に耐えられる構造が求められたりします。

例えば許可制になる建築物は社会福祉施設、病院、幼稚園などの弱者のための施設です。

家を建てたりするためにも土砂から守るように外壁を鉄筋コンクリート造にしたり、土砂をせき止めるための擁壁などが必要になるのです。

なお、特別警戒区域は対策工事の実施や地形が変わったことで指定事由が無くなると解除されることもあります。

神奈川県逗子市のマンションが建つ斜面が崩落

事故は2020年2月5日の朝にマンションが建つ斜面の一部が崩落して道路まで土砂がなだれ落ち、たまたま通学中で歩道を通行していた女子高生を巻き込んでしまったというもの。

事故の場所は県が2011年に土砂災害警戒区域に指定していたということで危険性があるとされていた場所です。

崖になっている部分の下方は石垣で補強されている部分もあったものの、補強がされていなかった上部の土砂が崩れてしまいました。

土砂災害警戒区域指定後に何らかの対策工事を行わなかったことが悔やまれます。

賠償問題になってくると、このような事故の場合はその土地の所有者に責任が生じます。

今回は分譲マンションが建っていることから、マンションの住戸の所有者一人ずつが土地についても所有者になります。

共用部分や土地の所有権は持分という考え方になるので、持っている権利は住戸の広さに比例します。

つまり逗子市の事故では、マンションの所有者全員が賠償責任を負うことになります。

現実的にはマンションの所有者全員=管理組合になるので、管理組合で賠償責任を負うことになると考えられます。

この場所が土砂災害警戒区域に指定されたのが2011年なのに対して、このマンションが建てられたのは2004年。

2011年の指定以降に中古で購入していた人は売買契約の際の重要事項説明で土砂災害警戒区域について聞いていたと考えられますが、2004年の新築時に購入していた人は土砂災害警戒区域になる前、建築時ももちろん指定されていなかったということになります。

都道府県は土砂災害警戒区域の指定はしても、対策工事を率先してやってくれません。

マンションの住人側としては管理していた管理会社の責任としたいところですが、管理業務は委託されているにすぎず、所有している訳ではないので、責任を問うのは厳しいといえます。
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土砂災害警戒区域のリスク

実は一年間で土砂災害は数千件起きており、深刻な問題なのです。

また土砂災害警戒区域に指定されても対策をするのは所有者個人なので、実際に工事をするのは困難です。

大雨や地震による地滑りやがけ崩れ

2018年の土砂災害は全国で3,459件で、集計が始まって以来、過去最多です。

平均発生件数も約3.4倍に増えています。

被害は家が1,505戸、死者・行方不明者も161名と甚大です。

擁壁等の高額な工事費

土砂災害を防止するのは所有者がすることになります。

毎年のように集中豪雨で土砂崩れが起きるというニュースを見ますが、土砂災害警戒区域に指定されていても私有地である場合は、対策工事は所有者任せ。

補助金を出す自治体もありますが、まずは所有者が動かなければなりません。

また、土砂災害特別警戒区域に指定されると、建築に制限がかかるため、土砂に耐えうる壁や、建物の構造も安全が保たれるものでなければならないため、木造よりもRC造、コンクリートで塀を作ったり、建築費が高くなる可能性があります。

損害賠償責任

逗子の事故のように所有している土地で土砂災害が起きた場合は、所有者が責任を問われる可能性が高いです。

予想もできない災害によって土砂災害になった場合は損害賠償請求が認められるか難しくなりますが、危険性が以前から指摘されていたのに何も対策をしてこなかった場合は、所有者の過失が認められれば不法行為となります。

また、土地工作物責任という無過失でも所有者が最終的な責任を負わなければならない法律があります。

土地工作物とは、建物の他に塀や擁壁のことも含まれますので、擁壁に問題があったとなると所有者に土地工作物責任という観点で損害賠償責任が生じるのです。
(※この売主の責任については、家を売るなら民法改正前がいい?新ルール契約不適合責任について解説で詳しく説明しているので是非読んでみて下さい。)

もっと身近で考えると、家の外壁が落ちて通行人に当たってしまった、というようなケースも被害者保護という側面が強いため、所有者は損害賠償責任を問われる立場なのです。

土砂災害警戒区域にある家を売る方法

さて、土砂災害警戒区域はリスクが高く、誰でも買ってくれるものではありません。

ではどのような売却方法があるのでしょうか。

擁壁等の設置

対策を買主が費用負担をして工事するという選択肢。

先に対策がされていれば購入のハードルを下げることができます。

しかし斜面の大きさによっては多額の費用がかかるので、状況によって現実的には難しいかもしれません。

買取業者

仲介に出すよりも早く売る方法は業者に買い取ってもらう方法です。

価格は下がりがちですが、売却後に土砂崩れが起きてしまった時に買主が業者であれば揉める可能性が低くなります。

斜面を安全にするための改良工事は費用もかかりますが、現状引き渡しで買い取ってもらえば売主側の持ち出しはしなくてもよくなります。

まずは不動産業者に相談を

土砂災害警戒区域は不動産業者であれば誰でも知っている知識です。

心配なことはまず相談してみましょう。

とは言っても、どこの不動産業者に相談すればいいか分からない人が多いのではないでしょうか。

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